2004年08月02日

深い闇

私は、霊感が強いというほどでもないのですが、
よくそういう気配を感じたり・・・見かけたり、予知というのでしょうか・・・?
そんな事があります。
ここでは、実際に私が体験した事を、書いて行きたいと思っています。
尚、作中の人物の名前はすべて仮名です。

* * * * *

会社の仲良し同期6人(男女3名ずつ)で、スキーに行った。
場所は塩原。ハンターマウンテンスキー場。スキーも温泉も楽しもうという魂胆だ。
宿は、渓流沿いの古くて大きい和風ホテルだった。
仲居さんに案内されて部屋のドアを開けた時、えも言われぬ悪臭と、
真冬の無人の部屋だというのに生暖かい空気、圧倒されるような威圧感が私を襲った。

「わ〜!広くて眺めの良いお部屋!」
和美が嬉しそうに声を挙げた。
スキーシーズンで空き部屋が一部屋しかなく、男女相部屋となってしまったが、窓からはせせらぎとともに渓流が見え、しっとりと落ち着いた…一見するには…和室だった。

私以外、この異様な空気に気付いている者はいなかった。
皆嬉しそうにはしゃぐか、やれやれという感じで、荷物を下ろしていたので、疲労から来る単なる気のせいだと、私の心の中だけに封印する事にした。

夜、4人が並んで、その頭上に2人縦になって寝る事にした。
私は4並びの一番端だった。
運動した後の心地よい疲労感と温泉の温もりからか、程なくあちこちから寝息が聞こえてきた。
静まり返ると、川面のせせらぎがやけに耳に付く。
それは時折すすり泣く女性の声にも聞こえた。

「早く眠らなきゃ」

そう思えば思うほどなかなか寝付けなかったが、さすがに睡魔には勝てず、
いつしか深い眠りの底へと落ちていった。

どれくらい眠ったのだろうか?!何かの気配と、膝から下に重みを感じて目が覚めた。眠い目をこすって自分の布団に包まれた足元を見る。
いや。見ようとした。
が、私の腹部のあたりから、黒い雲のような、濃い気体のようなものが、ぴったり、そして分厚く私の上に浮かんでおり、そこから先は見えなかった。その部分だけが、闇の中でさらにぽっかりと深い闇が口を開けているようで、不気味に蠢いていた。
私の膝から下には、はっきりと人間が座っているくらいの重みが感じられ、動かす事が出来なかった。言いようの無い恐怖が襲ってきたが、何故か不思議と心は落ち着いていた。私は、頭上に寝ている、一番しっかり者のアニキ分、上原に横になったまま声を掛けた。
「ねえ、上原さん、起きてる!?」
「…ん!?…なに…」
私の声で、上原は目が覚めたようだった。
「悪いんだけど…ここ、入り口で寒くて眠れないの。代わってくれないかな!?」
「そう・・いいよ」
上原は、なんの抵抗も無く素直に代わってくれた。
私は上原の温もりが残る布団の中で、瞼を強く閉じ、何も考えずに眠った。

次の朝、上原はいつもと変わらなかった。
「あれはやっぱり私の考え過ぎ、見間違いだったんだ」
安心して、スキーを楽しんだ。一気に斜面を滑り降りていると、
「お〜い!待てよ〜」と、上原が後ろから猛スピードで滑って来た。私は適当な斜面で止まると、昨夜の感謝も込めて、上原に微笑んだ。
「皆がさ…怖がるといけないから、敢えて朝言わなかったんだけどさ・・おまえ昨日、なんか見たんだろ?!」
「えっ!…」
「それでさ、俺に代わってくれって言ったんだろう!?」
「・・・」
私は、言葉を失った。
「ま、いいんだけどさ。ずぅ〜っと脚の上に誰かに乗られててさ、まだ脚がしびれてるんだよ。和美とかに言うと、大袈裟になるから、この事は2人だけの事って事で。忘れて楽しもうな!」

笑って滑り出した上原の後ろ姿を見ながら、私はあの部屋に入った時の湿った異質な空気と、脚の上の確かな重み、
蠢く深い闇を思い出していた。

あれは、気のせいなんかじゃなかったんだ・・・

あれから、あのホテルを、ガイドやパンフレットで目にする度、あの重苦しい空気が私を包む。
あの部屋は…満室の際の、最後の最後の…開かずの間だったに違いない。

今も あのひと は、誰かに自分の存在を訴える為に、今日もあの部屋で待っているのだろうか?!


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posted by Cimbombom at 23:31| Comment(0) | TrackBack(0) | 本当にあった怖い話 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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